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独占禁止法についての解説記事が「金融法務事情」に掲載されました

2024年09月18日

平山賢太郎弁護士が、独占禁止法の解説記事「⾦融機関におけるカルテル・コンプライアンス態勢の構築 : 多様なカルテルリスクの発見と対応」(金融法務事情2024年9月10日号)を執筆しました。

カルテル・コンプライアンス態勢の構築
ー多様なカルテルリスクの発見と対応ー

金融業界においては、カルテル規制の観点から公正取引委員会(以下「公取委」という)が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という)違反被疑事件の審査に着手して行政処分や行政指導を行う例が続いており、独占禁止法リスクを抽象的なリスクにすぎないなどと軽視することは困難である10
しかし、いざカルテル・コンプライアンスの取組みを実施しようとすれば、確立した商慣習との緊張関係や、脱炭素・グリーン社会進展など最先端の課題に直面することも少なくない。同業他社との接触禁止など適り一遍の禁止事項を記した「独占禁止法マニュアル」を従業員に配布するだけではカルテルリスクに適切に対応することはできないのであり、経営陣が重大な決断を迫られることも想定しておく必要がある。
本稿では、近時の話題を紹介しながら、金融業界におけるカルテル・コンプライアンス態勢構築の留意点について検討することとしたい20

独占禁止法は公正かつ自由な競争の促進を目的とする法律であるところ、業界を問うことなく、金融業界にも原則として適用される。日本の公取委による独占禁止法違反摘発の第1号案件は、建設業の談合事件ではなく、百貨店による優越的地位濫用事件でもなく、銀行の貸出金利・預金利率力ルテル案件だった(帝国銀行ほか27名に対する件(1947年))。金融業界は独占禁止法

にとって、そして公取委にとって、“付き合い’'が最も長い業界なのである。競合関係にある複数の金融機関が金利その他の取引条件等についてカルテル合意を行うことは「不当な取引制限の禁止」(独占禁止法3条後段)により規制されている。同業他社との合意や共同の取組みは、金利引上げなど競争制限的な目的に基づく場合には原則として違法と評価されているほか、コスト削減など正当な目的に基づいて行われる協業であっても、手段が過剰で

1 公取委がカルテル該当のおそれがあるとして警告(行政指導)を行った近時の事例として、欧州国債カルテル事件(公取委詈告2017年3月15日)がある。
2 本蘊の意見にわたる部分は筆者の個人的見解であり、筆者が所属しまたは所属していた組織・団体等の見解を示すものではない。

22 No.2241 • 2024.9.10

あって著しい反競争効果を生じる場合には問題視されることを避けられない。
金融業界と独占禁止法
金融機関はあらゆる企業や個人と取引を行っているので、事業者等が抱える様々な課題への対応を信用供与等の手段によってサポートすることを期待されている。しかし、かかるサポートを実行するにあたって同業他社と協働する場合には、カルテルリスクに留意する必要が生じる。
金融業界においては、同業他社接触禁止などの禁止事項を明記した「独占禁止法マニュアル」を作成して従業員に配布し周知徹底することが広く行われており、業界団体もマニュアルを作成して会員企業に周知している。しかし、それだけで近時の新たな課題に十分に対処できるだろうか。
以下においては、カルテル・コンプライァンスの観点から金融機関が留意すべきいくつかの論点を紹介することとしたい。
(1) 商慣習とカルテル規制
a 問題の所在
企業向け火災保険料の価格調整等を行っている旨の疑いに基づいて公取委が損害保険会社に対して審査を行っている旨の報道が、2023年以降相次いでいる。他方で金融庁は、同年12月、大手損害保険会社4社に対して業務改善命令を行った\
損害保険会社からの報告に基づく金融庁

の分析によれば\企業保険の入札において幹事・シェア等を現状維持するなどの目的に基づく保険料調整行為が行われていたという不適切行為が各社から報告されたが、「部長が指示した」「課長・部長・役員が認識していた」「役員が指示した」という報告の割合は「0%」であった。各社の回答内容を前提とすれば、本件保険料調整行為は、各社経営陣の間のカルテル合意に基づいて各社従業員が上司や経営陣から指示を受けて価格引上げ等を実行するという典型的なカルテル事案とは趣を異にするものであったようにみえる。
このことについて、金融庁は「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書を公表し\保険料調整行為の背景に「幹事となる損害保険会社の保険料を基準として組成される共同保険のビジネス慣行」(複数の損害保険会社が提示した保険料のうち最も低い保険料がすべての損害保険会社の保険料になるという慣行)等の環境要因があったことを明らかにした6。その上で、報告書は、各損害保険会社の保険料を統一することなく共同保険を組成することなどを提言している。
b コンプライアンス上の留意点
上記の商慣行は特異なものであり、これが競争秩序を歪める要因であったことは明白であるように思われる。かかる商慣行が確立してしまい、その他の事情と相まって

3 金融庁「大手損害保険会社に対する行政処分について」(2023年12月26日)および「大手損害保険会社の保険料調整行為等に係る追加調査の結果について」(2024年6月28日)。
4 金融庁「大手損害保険会社の保険料調整行為等に係る調査結果について」(2023年12月26日)。
5 金融庁「「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書一我が国保険市場の健全な発展に向けて一」(2024年6月25日)。
6 本文記載の事情のほか、近年では、自然災害の増加により火災保険分野における収益悪化が各社の経営上の課題になっていたという事情もあったようである。

同業他社接触が不可避となっていたのだとすれば、各社が従業員に対して通り一遍の
「同業他社接触禁止ルール」を周知していたとしても、不適切行為の未然防止という効果を期待することはできない。
公正競争秩序の形成を妨げる商慣習が確立している業界においては、かかる業界の事情を反映しない‘‘教科書的’'な内容の独占禁止法マニュアルを作成したり社内研修を実施したりしても、カルテル・コンプライアンスを徹底することは困難である。むしろ、経営トップの主導のもと、カルテル・コンプライアンスの観点から不適切というべき商慣行の是正に取り組むほかないだろう。損害保険業界においては、金融庁による上記の業務改善命令および有識者会議の報告書において問題点および改善の方向性が明確に示されたところであり、これらを踏まえた是正措置の進展を期待したい。
ところで、同業他社との接触の機会が多く、実際に接触が重ねられていたとしても、かかる事実を認識する機会がなければ経営陣が問題を把握することは困難であり、対策を講じることも不可能であろう。同業他社との接触のうち類型的に独占禁止法違反リスクが高いものについて法務・コンプライアンス部門や上司への事前承認・事後報告を求めるという取組みが、さまざまな業界の多くの企業で導入されるようになっており、金融機関もこれを参考とすべきだろう。
(2) 電子滴取引・アルゴリズム
a 問題の所在
競合関係にある金融機関との価格等情報

交換は、チャットなどを用いた各社従業員 間の連絡によることなく、オンライン・プラットフォームを通じてコンピュータ・システムによって自動的に実行されることも考えられる。この場合には、人間には実行不可能な常時・多頻度の情報交換が行われ、協調的な価格決定が実現してしまうのではないかという懸念が高まることとなる。かかる観点から公取委が懸念を示したと
みられる事案として、国債私設取引電子商取引サイトにおける気配値自動提供についての事前相談事例があるし電子商取引サイトの開設者が、証券会社と機関投資家との間で行われる国債売買取引のため電子商取引システムを考案し、証券会社が提示する気配値のうち顧客にとって最も有利な気配値(最良気配値)を証券会社にリアルタイムでフィードバックすることを計画したというものである。
公取委は、電子商取引サイトに参加する証券会社が次に気配値を提示する際に、直前に受領した最良気配値清報が目安となってしまう可能性を否定できないと指摘し、
「証券会社間に国債の売買価格についての共通の目安を与え、各社間で国債の売買価格に関する暗黙の了解又は共通の意思の形成につながる可能性があることを現時点で否定することはできない」と述べ、「このようなことがないよう十分留意する必要がある」と回答した。
b コンプライアンス上の留意点
近年においては、企業の従業員が会議室、飲食店等において価格清報等を共有してカルテル合意に至るという旧来型のカル

7 公取委「国債取引に関する電子サイトを利用した私設取引システムについて」(2002年3月14日)。

テルのみならず、アルゴリズムを活用するなど“人間”が介在しない価格競争制限行為に対する懸念も高まっている。クローリングによる他社価格調査やアルゴリズムによる価格設定行為は“人間”である各社従業員とは異なり不眠不休かつ高速で遂行できるので、深刻な競争制限効果を生じるのではないかと懸念されている。
しかし、実際のところ、アルゴリズムが “人間”である経営陣の意思に反して競争制限行為を行うという事態は、少なくとも現時点では現実の摘発対象とはなっていない。実務上問題視されているのは、競争関係にある複数の事業者が、同一の価格設定アルゴリズムを導入することを会合の場などにおいて合意するという行為である。この場合には、“人間’'である経営陣が価格引上げを意図して同一の価格設定方法を採用する旨合意した、という伝統的態様によるカルテルを容易に認定できるだろう。
上記の公取委事前相談事例は、電子商取引サイトの運営者が“情報センター’'となり、コンピュータ・システムを用いてリアルタイムの気配値提供を行うというものであるところ、多数の証券会社はそのことを知りながら当該電子商取引サイトに参加するのであるから、同一の価格設定アルゴリズムを導入する旨合意するのと同様の価格競争制限効果が懸念される事案であったと考えられる\
カルテル・コンプライアンス態勢構築の観点からは、コンピュータ・システムを活用したクローリングなどの価格調査やアル

ゴリズムによる自動的な価格設定方法の採用に際して、同業他社と協議や合意を行うことを避け、競争に勝ち抜くための独自のビジネス判断によって業者を選定することが重要である。新技術を導入する際には同業他社の動向が気になることもあるだろうが、同業他社接触の方法による情報収集は厳に慎むべきであると考えられる。
(3) 脱炭素・グリーン社会実現
a 問題の所在
我が国では、地球温暖化対策の推進に関する法律が2050年までの脱炭素社会実現を目標に掲げ、さらに「地球温暖化対策計画」が閣議決定されるなど、環境負荷の低減と経済成長の両立する「グリーン社会」実現が政府全体の目標として推進されている。
他方で、メーカーが‘‘環境にやさしい”商品を同業他社に先駆けて販売しようとすれば、環境対応のため製造コストが高くなることが通常であるといわれており、かかる追加コストを販売価格へ転嫁すれば市場シェアを失ってしまうことが懸念される。金融業界においても同様であり、例えば、脱炭素の取組みが遅れているメーカーに対する融資の貸付利率を銀行が引き上げれば、当該銀行は、融資案件を獲得できないので事業性融資の分野における市場シェアを失ってしまうこととなるだろう。
したがって、グリーン社会をより実現するためには、各社が市場シェア喪失の不安を抱くことなく取組みを進めることができるよう、同業他社との協働を許容すべきではないかと指摘されている,。しかし、か

8 電子商取引サイトの運営者を“ハブ”とするハブ・アンド・スポーク型のカルテルとみることができる事案であったと考えられる。

かる取組みには同業他社である他行との合意を伴うので、当然ながらカルテルリスクが生じる。
このことに関して、公取委はグリーンガ
イドライン10を策定し、事業者がグリーン社会実現に向けて実施する共同の取組み等について「競争政策の観点からも、これまで以上に事業者等の取組を促進することが求められている」という認識を示した。グリーンガイドラインは、脱炭素・グリーン社会進展のために金融機関が同業他社と協働することに対して好意的な姿勢を示したものであると理解することができ、この点において注目すべきものである。
しかし、公取委が脱炭素・グリーン社会進展のための同業他社との協働に対して好意的であるとしても、そのことは、海外の政府、独禁当局等が同様に好意的な姿勢を示すということを意味しない。
例えば金融業界においては、ネットゼロ
(脱炭素)の実現に向けて金融機関をグローバルに結集するための組織としてGFANZ (Glasgow Financial Alliance for Net
Zero)が2021年に組織され、そのもとに損害保険会社、商業銀行等セクター別の傘下組織が設けられた。しかしその後、傘下組織のうち損害保険会社が参加するNZIA (Net Zero Insurance Alliance)に対して、米国内の23州の司法長官が、競争関係にある損害保険会社が特定の取引先と損害保険契約を締結しない旨の合意をすること
は独占禁止法(反トラスト法)に違反し得

る旨の懸念を示すという事態が発生した。その後、日本の損害保険会社はNZIAから脱退した。
また、米国連邦取引委員会(FTC)の高官は、環境負荷軽減などのイノベーションは個々の企業によって行われるべきである旨の認識を最近のスピーチにおいても明確に表明しており、同業他社との協働に対して好意的な姿勢を示していない。
b コンプライアンス上の留意点
脱炭素・グリーン社会進展のための同業他社との協働にはカルテル規制の観点から慎重に検討すべきものもあると思われるが、グリーンガイドラインの策定によって、日本の公取委からは好意的な評価を受けることができるだろうという期待感が広がっているように感じられる。
しかし、例えば製造業分野において同業他社との共同生産が行われ、米国など海外で商品が販売される、というグローバル案件においては、各国独占禁止法に基づいて各国当局がカルテル規制を発動するというリスクを想定しなければならない。同様のリスクが金融業界において顕在化したのが上記のGFANZ事案であったといえる。
金融機関が同業他社との協働を検討する際には、協働の成果が米国その他の海外に及ぶか否か確認する必要がある"。カルテ
)レ・コンプライアンスは必ずしも日本の独占禁止法の観点からの検討だけで完結するとは限らないので、必要に応じて海外独占禁止法(競争法)の執行トレンドを踏まえ

9 このことに言及している邦語文献は乏しいが、経済産業省「グリーン社会の実現に向けた競争政策研究会」第2回会合議事録(2022年4月21日)が参考になる。
10 公取委「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」(2024年4月24日改訂)。

た検討を行うことが望まれる。
(4) 人口減少社会におけるインフラ維持
a 問題の所在
金融機関によるカルテルといえば、融資取引における金利カルテルがまず思い浮かぶであろう。しかし、競争は、価格12だけではなく品質をめぐっても行われるものである。複数の金融機関が共同してサービスの品質を取り決める場合には、カルテル規制の観点からの検討が当然必要となる。
急速に人口減少が進んでいくことが確実視されている我が国においては、例えば、国民生活を支えるインフラというべき ATM網を個々の金融機関が維持することは困難になる可能性がある。地域銀行の合併、共同経営等については独占禁止法の適用を排除する特例法が施行されたが尺 ATM共同化(相互開放)のように共同経営には至らない業務提携についても、公取委がこれをいたずらに問題視し業務提携を阻止してしまうようでは、その結果として各金融機関のATM網が縮小して‘‘自宅や職場の近くでATMを利用できる”という利便性が犠牲になってしまうという本末転倒の事態が生じかねない。
このことに関して公取委は、銀行ATM

の相互開放および統廃合に関する事前相談事例"において、店舗外ATM維持に多額の費用を必要とするという事情や、相互開放ATMやコンビニATMの増加によって店舗外ATMの必要性が相対的に低下しており店舗外ATM配置の見直しが喫緊の課題となっているという事情を前提として、店舗外ATMのうち近接しているものの一部を統廃合することは問題ないと回答した。
b コンプライアンス上の留意点
金融機関、とりわけ銀行は、公共交通機関、放送・通信などと同様に、国民の生活や事業者のビジネスを支える基幹インフラであり、人口減少社会にあってもサービスレベルを維持することが要請される存在であるといえる。金融機関が協働の取組みを推進するにあたっては、競争制限効果が限定的である旨公取委に説明することが必要であることはいうまでもないが、これにとどまらず、人口減少という社会的課題に対処してインフラを維持するという金融業界の使命を公取委に説明し、協働の正当性について理解を得ることも重要であろう。
ところで、独占禁止法に違反しない旨の回答を支障なく公取委から得るためには、同業他社との協働には独占禁止法の観点か

11 脱炭素・グリーン社会進展に反する取組みを行う企業に対する融資の実行を他行と共同して一斉に拒絶することも考えられる。この場合には、脱炭素・グリーン社会進展に貢献するという正当化理由が十分に説得的であるといえるか(殺資実行を拒絶することは、直接的に脱炭素・グリーン社会進展に資する行為ではないのではないか)検討する必要があると思われる。
12 公取委I独占禁止法に関する相談事例集(平成24年度)」事例5 [金讃機関による手数料の無料化」で
は、複数の金融機関が提携し、各行の顧客が支払うATM手数料はいずれの提携金融機関のATMを利用しても平日の営業時間内は無料とするという計画について、公取委は、手数料無料化は顧客の利益を害するものでないことや有力な競争者が存在することを理由として、問題ない旨回答した。
13 地域銀行の経営統合について独占禁止法の適用を除外する特例法の内容および論点について、平山賢
太郎(司会)ほかI《座談会》地域銀行の経営統合ー特例法を中心とする法制度の運用と活用の課題ーJ本誌2165号6頁以下参照。
14 公取委「独占禁止法に関する相談事例集(令和元年度)」事例1 「銀行2社による店舗外ATMの設置
拠点の統廃合及び相互開放j。

ら検討を要すること、それゆえ法務・コンプライアンス部門に連絡して検討を求めるべきであること、を経営企画その他の事業部門が理解していることが必要である。法務・コンプライアンス部門は、連絡を受けなければ助言を行うことができない。
しかし、社内研修テキストが談合や金利カルテルなど原則違法といわれる行為類型の解説に終始しているようでは、かかる理解の浸透を図ることは難しいだろう。同業他社との協働の取組みについて気軽に法務・コンプライアンス部門へ相談できる雰囲気を社内に確立することが望まれる。
国ぉゎりに
金融機関が直面するカルテルリスクは、多様である。原則違法というべきカルテル・談合のみを想定して同業他社接触禁止を従業員に周知徹底するだけでは、カルテルリスクを十分に軽減したとはいい難い。
金融機関のカルテル・コンプライアンス態勢構築にあたっては、本稿において紹介したような多様なカルテルリスクを個々の従業員が漏れなく発見し正確に評価することが実務上不可能であろうということを前提として、カルテルリスクを発見し評価するための必要な情報が法務・コンプライアンス部門へ日々集約される仕組み作りを進めることが重要である。具体的には、同業他社接触承認申請・報告制度を導入したり、業務提携案件について法務・コンプライアンス部門へ相談するよう呼び掛けたりすべきだろう。このことによって、カルテルリスクの増大を未然防止するための措置を、速やかに実行することが可能になる。また、カルテルリスクが発見され法務・

コンプライアンス部門による評価を経た結果、リスクが重大であることが判明した場合には、商慣習の変更や損失発生を伴う重大な決断を経営トップが自ら下すことが必要となるだろう。このことが金融機関におけるカルテル・コンプライアンスの成否を握っているのであり、それゆえ、カルテル・コンプライアンス態勢の構築は経営トップの主導のもとで行われる必要がある。

ひらやま けんたろう/平山法律事務所筑波大学ビジネスサイエンス系准教授・平山法律事務所代表弁護士。
2001年東京大学法学部卒業・2002年弁護士登録(第二東京弁護士会)・2019年博士(法学)
[神戸大学]。
公取委における勤務経験や大学における研究成果を活かして独占禁止法案件を専門的に取り扱っており、金融業界では商業銀行・クレジットカード会社・損害保険会社等に対して助言を行っている。
経済産業省「デジタルプラットフォームの透明性・公正性に関するモニタリング会合」など様々な政府機関会合の委員を務め、独占禁止法の観点から提言を行っている。

 

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